blogぼちぼちいこか/伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会 - 2015/10

サークルぼちぼちいこか/伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会




2015年10月13日(Tue)▲ページの先頭へ
三重フレネ研究会 例会案内 (10月)
三重フレネ研究会
 
〈10月研究会の提案 〉
 
10月17日(土)  午後15 : 30 〜 18 : 00
 三重大学教育学部2F グループプロセス室
(教育学部道路側階段を上がった右角の部屋)
正門横の駐車場から向かって左の建物の階段横にある教室の奥です。校舎の入口がしまっていますので、浜口まで電話して下さい。
 
《テーマ》
  学校に対する保護者の意識と関与  
    大日方真史 (三重大学)
・大日方先生によるレポートです。
・11/8の三重民教連の集会で分科会を持ってほしいとの依頼があったのでその件についても話し合います。


2015年10月10日(Sat)▲ページの先頭へ
ひきこもりとその支援についてB(紀宝町での講演原稿)
さまざまなひきこもり支援
 
 
大まかな方向性については先に述べた通りですが、民間でできる支援……ということで考えた場合、当事者や家族がより良い方向に状況を改善していくのを支援するには、多くのことが考えられます。それについても少し考えてみましょう。
 
まず、誰でも、今すぐにできることがあります。それは、ひきこもりについて今より少しでも多く理解を深める努力をすることです。これは、その気になれば、誰でも、たった今から実行できる「支援」です。そしてそれは、様々な支援の根本にあるとても大切な事なのです。何故かというと、別にひきこもりに限らず、自分が何かで深く悩んでいる時にその相談をする(あるいは愚痴を言う)相手は、それを理解し共感してくれそうな相手を選ぶからです。そして、悩みを理解してもらえたり苦しさや辛さを共感してもらえたりしたら、ずいぶん気持ちが楽になります。
 
これは、「ひきこもり」問題でも同じで、「ひきこもり」についての理解の深い人が相手であれば、本人や家族も、知らない人や関心のない人に対してよりもずっと話しやすくなります。こうしたことは、本人や家族を孤立させないということにつながる、とても大切な支援です。不登校・ひきこもりに限らず、家族会や当事者会がいろいろあります。発達障がい関係では「あすぺ・えるでの会」などがけっこう有名ですが、北朝鮮拉致被害者の家族会はマスコミにも度々登場している《家族会》です。いずれの場合でも、家族や当事者という同じ立場の人が集う「場」ですから、どんな話をしても理解し共感してもらえる可能性は高くなります。そこが《家族会》や《当事者会》のいいところであり、家族会や当事者会の存在そのものが、問題を抱える家族や当事者の孤立を防ぐのです。
 
安心して話ができ、共感してもらえる「場」が存在することは、精神面の安定に関わるとても大切なポイントです。精神的な安定は、心の余裕を生みます。心の余裕は視野を広げ、また様々な対応にも余裕を生みます。そうした余裕が、生活のゆとりや当事者をとりまく環境の変化につながります。そしてそれは、状況を改善していく土台となるのです。また、同じ問題を抱えていても、一人ひとりがその問題に向き合って関わっている時間や経験が違いますので、知識や情報の交流という意味でもプラス面は大きいのです。
 
私が関わっている【三重県登校拒否・不登校・ひきこもりを考える会】や【伊勢志摩不登校・ひきこもりを考える会】もこうした家族会の一つです。だから、理解を深める……ということから発展する支援の形としては、家族会や当事者会のサポートをしていく……ということが一つは考えられると思います。
 
それ以外にも、様々な支援が考えられます。というのは、立ち直っていくステップの中で、それぞれの段階において必要な支援、というものがあるからです。
 
当事者本人が深く傷ついて、それをどうすることもできないような段階では、まず安心して十分に休める「場」が必要です。そして、その「場」となるのが、たいていは家族・家庭です。それに加えて、本人と何らかの形で接触が可能なのは、家族、特に母親……の場合が非常に多い。けれども、当然、母親や家族には理解のない親族や近隣の人々の心ない言葉などを投げかけられているケースも多く、精神的に負担がかかっています。だから、心ないうわさや中傷、無理解な言動に母親や家族がさらされるとさらにストレスや負担が拡大することになります。それは結果として本人への対応の悪化に直結していきます。ですから、その家族を孤立させずにサポートする「場」があれば、本人の周りにいる母親や家族が安定し、本人への対応に余裕が生まれて、本人にとって家庭や家族が安心して十分に休める「場」となっていきます。ただ、発達障がいやうつ病、統合失調症の可能性も当然あるわけですので、いつでも医療や福祉へつなげられるように、家族の周りでサポートしてあげられると良いでしょう。
 
三重県登校拒否・不登校・ひきこもりを考える会は、そうした家族を支える家族会としてスタートしました。私自身が参加した時は、「教育」の専門家として入ったのですが、相談を受けていく中で臨床心理学やカウンセリングの理論やノウハウの必要性を痛感しました。そこで、まずは独学で、その後専門的なレクチャーや訓練も受けて臨床心理学やカウンセリングを学び、対応できることも増えて、現在に至っています。が、民間ボランティアとして考えれば、精神医療の専門医や病院を教えてあげたり、福祉の窓口について教えてあげたりするだけでも大きな助けになります。特に初期には、家族は、本人への対応で手いっぱいで、そうした情報を調べる心の余裕も時間もないことが多いからです。
 
教育や心理、福祉の専門的な知識を持っていたり、つながりを持っている人は、時間の許す範囲で、「当事者の会」や「家族会」を作ったりサポートする側に回ったりすると良いのではないかと思います。伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会でも、いせ若者就業サポートステーション(サポステ)のスタッフが参加してくれています。専門的な知識や情報の持つ意味は大きいのです。
 
本人が動き出した段階では、本人が無理しすぎない程度に、様々な活動に参加しやすい環境を整えることが大切です。活動に参加して、「まあまあ、うまくいったかな」という実感を持てるようになると、それが自尊心の回復や自信につながって、次の活動へのエネルギーとなります。この「まあまあ」というのは、結構大切なポイントになります。というのは、本人に完璧主義の傾向がある場合が多いので、「完璧に出来ない」と「ダメ」ということになって、逆に自信や意欲を失ってしまうことも少なくないからです。そうした注意は必要ですが、様々な参加しやすい活動やイベントを続けることも、民間や周りでできるサポートということになります。ボランティアに誘ったり、様々な活動や日常の場面で、本人があまり負担にならない程度に挨拶をしたり話しかけたりすることが大切です。
ひきこもりの期間が長引くと、他者と接するのが不安になったり怖くなったりするものです。その気持ちは、言葉の通じない外国の空港や港に一人で降り立ち、周りに知人が一人もいなく連絡を取る術もない状況を想像すると理解しやすいかも知れません。たぶん、それでも平気で動ける人はあまりいないでしょう。それとまったく同じではないにしても、ひきこもりの当事者はそれによく似た不安や恐怖を感じていると考えてもらったらいいと思います。
 
10年ほど前の話ですが、私がタイのチェンライ空港を離れる時、荷物の中にあったお土産のお茶の箱が機械の検査にひっかかり、荷物の開示を求められてことがありました。私は笑顔でOKして鞄を開け、中のお茶の箱も開封しようかと尋ねたところ、係の人も笑顔になって、それには及ばない、と言い、さいごに向こうから日本語で「アリガトウ」と言われ握手をしてもらいました。笑顔や挨拶は、「自分があなたの敵ではありません」と相手に伝える大切なメッセージなのです。けれども、逆に顔をこわばらせて黙ってしまえば、相手に不信感を与えます。チェンライ空港で私がそのような対応をしたら、多分、ややこしいことになっていたでしょう。
 
ところが、長くひきこもっていると、こうしたことが分かりません。また他者に対する恐れや、自分が上手に対応できなくて相手を怒らせてしまったり相手に嫌われてしまったりする不安や恐怖でいっぱいで、黙ってしまったり、顔をこわばらせて固まってしまったり、逃げ出してしまったりするような対応になるでしょう。自分の心の中の不安や恐怖しか考えられず、その対応が逆に相手に不信感を与えたり怒らせたりするなどということは、まったく思いいたらないのです。
 
だから、このような「不審な対応」をされたとしても笑顔を失わず、挨拶をしたり声掛けをしたりする対応を続けることも一つの支援になります。また、身近な話をできる人が、笑顔での挨拶や、ちょっとした言葉のやりとりそのものが、「私は敵ではないよ」というメッセージを伝えていることを、教え、行動で示していくと良いでしょう。それと並行して近所の人々や顔を合わせる機会のある人々にも挨拶や声掛けをしてあげると良いということを伝えていくと良いでしょう。そうした対応は「あなたの敵ではないよ」ということばかりでなく、「あなたを気にしているんだよ」というメッセージにもなっているのです。
 
当初は、先に述べた通り、本人の顔がこわばったり、何も反応を返してこなかったりする場合も少なくないかもしれません。それは、本人がどう対応していいかわからなかったり、間違った反応をしてしまうことを恐れていたりする場合がほとんどで、悪意や害意を持ってそうしていることはまずありません。だから、そうした反応に怒ったりせずに、にこやかで穏やかな対応(挨拶や声かけ)を機会があるごとに続けてあげられると良いと思います。本人は、コミュニケーションに自信を持っていないことが多いし、その結果としてコミュニケーションの機会が極端に少なくなっています。だから、挨拶を交わすだけでも、コミュニケーションの機会を提供していることになるのです。それもまた、大切なサポートです。
 
人間の能力は、使っていないと衰えるものが少なくありません。私は一時期タイの女性と結婚していたのですが、彼女が帰国していたときは時々タイ語で手紙を書いていました。離婚した後は、タイ語を書く機会がないため、現在、ほとんどのタイ文字を忘れてしまっています。ひきこもっている期間が長い場合でも、様々な知識や能力が低下していることが少なくありません。一方、就労に際して必要な知識や能力もあります。ところが、長期間ひきこもっていると就労に最低限必要な知識を忘れていたり、必要な技術や気配りなどが低下していたりするのです。伊勢のサポステのスタッフによりますと、就労に際しては最低限小学校5年生程度の学力が必要だ、と言います。だから、当事者に勉強を教えたり、学習につきあってあげたりするのも周りでできる重要なサポートです。また、本人に教えられなくても、同じ部屋で一緒に別の勉強をする形を取っても良いと思います。本人は自動車の免許取得の勉強、お母さんは簿記の資格の勉強……というのもアリです。自分だけが勉強しているのではない、と思えば、そのことが勉強する上での励みにもなります。
 
それから、就労に際してのサポートについても触れておきましょう。家族も本人も、精神的に焦っていると、一足飛びに完全な正規雇用を目指すかも知れませんが、ほとんどの場合、それは困難です。起きられない、長時間同じことが続けられない、など、体や心が短期間で正規雇用に対応できないことが多いからです。だから、作業所や短期間・短時間のパートやアルバイトなどで体や心を慣らし、徐々に働ける時間を長くしていって安定した雇用につなげていけると良いかと思います。
 
その時に、夕方いつも、あるいは一日おきにでも、おじいさんの畑仕事を手伝う……というような、お金につながらない労働から始めても良いでしょう。その前段階として、風呂の掃除に責任を持つ、とか火曜と金曜の夕食は作る、といった家事の分担をして、それを守らせ、責任を持たせるというようなことも良いかと思います。本人にとって簡単すぎる課題だと、達成感や自信につながりませんし、難しすぎる課題だと続きません。続かない時は、課題設定に問題がある、という方向で考えて、本人と一緒に適度な課題に修正すれば良いでしょう。
 
このようなことをベースに考えると、ここでの支援についても、いろいろなことができるとお分かりになるでしょう。まずは、作業所やパートやアルバイトの形で働ける場を確保すること。それから、働き口での経営者やそこで共に働いている労働者が本人への理解を深めてお互いが働きやすい環境を整えるサポートをすること。そして、就業だけではなく、続けるために、本人の悩みを聞いたり、トラブルを解決したりすることを目的として、定期あるいは不定期に本人と関わり、支援を続けることなどです。
 
だから、作業所などの働ける場を作ることも支援だし、パートやアルバイトの形も含めて、労働者として雇用することも支援となります。また働き口を紹介するのも支援ですし、働いている中での悩みを聞いてあげたり、トラブルになった時にサポートしてあげたりするのも支援です。それから、家以外でも安心出来る「場」を提供することも支援となります。それから、トライアル雇用など就労に関わる様々な制度もあるので、そうした知識を伝えたり、手続きを教えたり、サポートしたりする支援の形もあります。
 
また、きちんとした就労までは無理な場合でも、本人に何ができて何ができないかを、本人と支援者や家族がきちんと確認し、出来ないことをカバーする制度につなげるのをサポートすることも大切な支援の一つです。条件によっては難しい場合もありますが、きちんと手続きをすれば障害年金などを受け取ることも可能になる場合もあります。そうした様々な制度につなげるのも大切な支援の一つです。
 
もちろん、これらをすべて、一人の人や一つの組織でする必要はありません。というより、一人の人や一つの組織で行うのはまず無理です。自分あるいは自分たちができることが何かを考えると同時に、それぞれのつながりを深め、たくさんのネットワークで支えていける体制を作っていけると良いでしょう。
 
以上、簡単ではありますが、私が知る範囲でのおおよそ重要と考えられることは話をさせていただきました。知ること、そして出来ることからやっていくということ、さらにその「出来ること」をつなげて、ネットワークで支えあっていければ少しずつ改善していけると思います。
 
 
                                   〔完〕


2015年10月09日(Fri)▲ページの先頭へ
ひきこもりとその支援についてA(紀宝町での講演原稿)
ひきこもり支援の方向性
 
このように、「ひきこもり」という言葉でひとくくりされている状態であっても、実は、様々なケースが考えられるのです。うつ病や統合失調症などの精神的な病が疑われるケースでは、少しでも早く医療機関につないでいくことが大切です。そして、治療や投薬によって症状が安定してきたら、それから、生活習慣の再構築や社会参加、就労(可能であれば)といったステップを踏んでいくと良いでしょう。その際、福祉との連携も大切です。作業所での活動や就労が困難な場合でも、福祉とつながっていくことで生活を安定させ、クォリティー・オブ・ライフ/生き方の質を高めていけるでしょう。
 
発達障がいが疑われるケースでも、医療や福祉とつながることは重要です。特に障碍者福祉手帳等の取得によって障碍者枠での就労が可能となる場合もあり、本人たちが安心できる「場」……居場所づくりと、家族や当事者本人を孤立させないような様々な支援が大切でしょう。
 
精神的な病や、発達障がいの可能性が少ないと思われる場合でも、家族とのつながりがぎくしゃくしていたり、他者との関係を結ぶことに気おくれを強く感じていたりする可能性はかなり高いと思われます。したがって、支援としては、家が安心していられる「場」になるように環境を整えること……辺りから手を付けると良いのではないかと思います。そして、本人の状態が落ち着いてきたら、家事などのきちんとした役割分担によって、本人の生活力を回復させながら、ボランティアなどの社会参加や就労への道筋を探っていくと良いでしょう。就労を最終目標とする場合は、自動車運転免許の取得も、特に交通の便があまり良くない地方の場合は大切なステップとなります。免許を取るための勉強は、だいたい、中卒程度の学力が基準になっていますし、取得すれば運転免許証は身分証明書としても使用可能になります。何よりも、就労が可能となる地域が拡大しますので、就労のための重要なステップとして自動車運転免許の取得はきちんと位置付けておくと良いでしょう。
 
こうした流れについては精神的な病や、発達障がいであっても医療との連携によって状態が安定すれば、生活の改善や作業所通い、アルバイトや就労につなげていくことも可能となるでしょう。私のカウンセリングの師匠…実は日本でのユング派の巨人、河合隼雄先生の弟子でした…が関わった事例でも、薬やカウンセリングで状態を安定させた精神疾患を持つ方が就労したという話を聞いております。適切な治療を継続しながら安定していけば、普通の人と同じように日常生活を送ったり就労したりすることが可能になる例もあるということなのです。
 
その際に、あせりは禁物です。一足飛びに正規雇用などという無茶は望んだり期待したりしない方が良いでしょう。正規の就労に家族がこだわった(その影響で本人も無理をした)ために何度も離職を繰り返したような例もあります。週一のアルバイトから、週三日、そして週五日…といったような感じで少しずつ身体と心を慣らしていくような形でステップを刻みながら自信をつけていくことが大切です。また、農業や林業、漁業など自然に近い所で身体を使う仕事は、続いてくれば、本人の心身に良い影響を与える場合が多いことも付け加えておきましょう。
 
一方で、こうしたステップを進んで、自立・就労まで行きつけない人も、残念ながら存在します。知的能力なども含めると、自立・就労までは困難だと判断せざるをえないケースも出てくるのです。その場合は、何とか生きていけるようにきちんと福祉につないでいく必要があります。
 
自立や就労が困難であると思われるのに、それにこだわって勉強をさせられたり様々な訓練を強制されたりするのは、ほとんど、いじめや虐待に等しい行為だと考えて下さい。ここには、様々な方がいらっしゃると思いますが、今の生活の中で、毎日チェコ語の本を読めるようにするための勉強を2時間するように強制されたらどうでしょうか。よほどチェコやチェコ語に興味がある、あるいはチェコ人の配偶者や恋人がいる人でない限り、1日で嫌になるでしょう。基本も何もない中で、あるいは理解や技術が十分進んでない中でそれを強制されるのは大変苦痛なのです。
 
だから、就労まではとても無理だろう……ということであれば、作業所は可能か……とか、家事はきちんとできそうか……とか、何とか能力を発揮させ、伸ばせるような可能性を探しつつ、死なずに生きていけるように福祉へつないでいく必要があります。障害年金や生活保護、様々なデイ・サービスなど、家族の方に万が一のことがあっても生きていけるような工夫が必要となります。
 
例えば、数年前、北海道や東京、埼玉などあちこちで孤立死事件が相次いだことがありました。生活保護を受けられる条件にありながら、世話をしていた家族の突然死によって世話や介護を受けていた人も死んでしまう、という事件です。背景に、生活保護バッシングなどによって手続きを躊躇したり、誤解したりして、SOSの声を出しにくかった事情もあるようです。しかし、逆に、きちんと福祉とつながっていれば死ぬことはなかったのではないか、と思われるケースも少なくありません。
 
自立・就労を目指すのが基本だとしても、それが難しい場合の対応についても、きちんと考えておく支援が大切です。孤立させず、必要に応じて福祉や医療につなぎやすい環境をつくる。地域全体にそうした努力が必要であり、それは公的な機関や組織にすべて「おまかせ」するのではなく、一人ひとりも、何らかの形で関わり、つながっていけるような形が理想なのです。自分が何かできる時には、その【何か】をして、逆に、それをしてあれば、もしもの時には【何か】のサポートを受けられる。そんな形に、少しでも近づいていければいいのではないかと思います。


2015年10月08日(Thu)▲ページの先頭へ
ひきこもりとその支援について@(紀宝町での講演原稿)
はじめに
 
 
9月に入って、紀宝町の社会福祉協議会さんから、10月5日に、ひきこもりについての講演をしてほしいということでご案内をいただきました。不登校やひきこもりの問題については、大学の卒業論文で夜間中学を取り上げた時点から数えれば30年、三重県登校拒否・不登校・ひきこもりを考える会の設立の準備段階から数えても15年になります。生計のための職業としているわけではありませんが、それなりに長い時間かかわり続けている問題でもあり、また、本格的に臨床心理学を学ぶきっかけにもなった問題でもあることから、まとめてみるのに良い機会でもあろうと考えてお話をお受けしました。
 
不登校・ひきこもりの問題は、私が関わっている二つの家族会【三重県登校拒否・不登校・ひきこもりを考える会】(三重県・考える会)および【伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会】(サークルぼちぼちいこか/志摩 & 子ども未来会議/伊勢)においても、今までとは少し様子が変化してきています。不登校よりも、学校を出てからの自立や就労の問題に参加者の意識が動いてきているのです。初めは「不登校」だった本人が高校を卒業し成人式を終える例がいくつも見られるようになり、親の方も歳を重ねていることから自然にそうなっていくのですが、全国的に見てもその傾向ははっきり出てきています。そして、特に高齢化の進む地域においては、親と本人の高齢化によって、ひきこもりを抱える家族では深刻な問題が生じるであろうことは容易に想像できます。
 
例えば、家族を支えていた親の収入の減少、親の介護の問題、当事者本人の対応力や生活能力の問題、働き口の数や働き方のバリエーションの数とサポート機関との距離といった就労の問題、さらに就労が困難で家庭の収入も多くないケースでの福祉につなげる問題など、実に様々な問題があります。それらいずれもが、本人のコミュニケーション力をはじめ、衣食住に関わる日常生活の能力の問題によって、家族と本人を深刻な事態に陥らせかねない可能性は決して低くありません。
 
そこで今回は、特に、ひきこもりに焦点を当てていろいろと考えていきたいと思います。
 
 
 
ひきこもりとは何か
 
 
現在では、「ひきこもり」という言葉は様々な場で耳にするようになってきています。例えば、私は文芸同人誌の編集をしていることもあって、時々「自宅にひきこもって小説を書きたい」と考えることがありますが、もし、それが実現したとしても、それはここで問題にしようとしている「ひきこもり」とはちょっと違います。私が小説を書く目的でひきこもったとしても、他の人に特に迷惑をかける訳ではないし、私という人間をよく知っている人たちなら、「ああ、またやってるな」と思う程度で、それが何かの病気ではなく特に問題にする必要はないからです。今ここで私たちが問題にしたいのは、その状態が続くと、本人にとっても家族にとっても、そして社会にとってもプラスにならないであろう「ひきこもり」のことです。
 
このような「ひきこもり」について、『社会的ひきこもり』(斎藤環/PHP新書)の著者で精神科医の斎藤環さんは、次のように定義しています。
 
@(自宅にひきこもって)社会参加しない状態が6ヶ月以上続いている。
A精神障害がその第一の原因と考えにくい。
・なお、【社会参加】とは、就学や就労をしているか、家族以外に親密な対人関係がある状態を指す。
 
つまり、「ひきこもり」そのものは、風邪や花粉症といった病気ではなく、単に状態を表わす言葉であるということなのです。実際、うつ病や統合失調症でも、いわゆる「ひきこもり」状態になります。そんな場合は病院にもかからずに放置しておくと症状が悪化して自殺願望が強まったり、幻覚が出たりして、より危険な状態になりますが、逆に、きちんと病院に受診して治療を受けると、最近は効果のある薬もいろいろ出ていますので、改善することが多いのです。
 
したがって、病の症状の一つとしての「ひきこもり」なのか、斎藤環さんのいう社会的ひきこもりなのか、という判断が重要になります。病の症状の一つとしてのひきこもり、あるいはその疑いがある場合は、急いで医療につなげる必要があるということです。けれども、カウンセラーでも精神科医でもない普通の人にとっては、その辺りの判断はなかなか難しい。一方で、周りが焦ってしまってエネルギーの切れた状態の時に無理をさせると関係がこじれてしまう。その辺の判断の目安として、斎藤環さんは6ヶ月という期間を設定しているわけです。
 
私自身も、斎藤環さんの判断は妥当だと思います。学校に通っている年齢での「ひきこもり」は、不登校の中の一つのパターンということになります。ひきこもらないで、外で遊び歩いての不登校……などというようなケースもありますから、一つのパターンということです。しかし最近では、学校時代はきちんと通えていたのに仕事に就いてから突然ひきこもってしまうこともある。うつ病や統合失調症とは違う場合でも、さまざまな「ひきこもり」がある訳です。
 
例えば、個性的であるため、周囲とおりあうのに疲れてしまったような場合は、ある程度、自我の強さを併せ持つことも多いので、しばらく休んだ後エネルギーを蓄えて自分から動き出す場合も少なくありません。その場合は、とにかく、安心して休める「場」の確保が大切です。家庭や家族、恋人や親友などがそうした「場」となり得ますし、趣味が共通な人々の集まりなどもそうした「場」となるので、安心してひきこもれる「場」を保証してあげられるようなサポートができると良いでしょう。そしてこの場合は、ある程度ひきこもった後、エネルギーを蓄えて、自ら動きだすことも少なくありません。
 
実際、私の関わった例でも、いじめを受けて不登校になっていたけれど、しばらくしてから知人の紹介でアルバイトを始め、職場でかわいがられてエネルギーと自信を取り戻し、好きなアニメ関係の道へ進んでいった子がいました。私は、直接その子と接することはありませんでしたが、家族会の中でずっとご両親の話を聞き、時にはアドバイスもして、間接的に見守り続けました。そういう「場」があることで、お母さんが不安定にならず、落ち着いて対応していきましたので、家族の中で暴力が出ることもなく、自らの道を見つけて進んで行きました。
 
このように、当事者本人を支えるというだけでなく、家族……特に母親を支え、孤立しないようにする、というのも大切なサポートです。私たちが組織して活動している家族会(三重県・考える会、子ども未来会議、サークルぼちぼちいこか)などは、直接当事者をサポートするのではなく、母親や家族をサポートすることで本人の周囲を安定させ、安心してひきこもれる「場」をつくるのを支援するのを基本としています。私自身は塾をしていますし、カウンセリングも専門的な訓練を積んでいますので、本人がそれらの会の例会に顔を出せば、学習の相談でも心の相談でも可能な範囲で応じていますが、基本は「家族会」ということなので、家族の支援を中心とした活動を続けています。
 
それから、同じ「ひきこもり」の形であっても、年齢相応の自我が十分に育ってなくて、楽な方に流れてしまい、ひきこもってしまうような場合もあります。自我の未熟さがちょっとしたストレスに遭って普通の人以上にダメージが残り、疲れてしまうような場合です。こちらの場合は、当初は安心して休むことも大切ですが、自我の未熟さが安易な方向に流れてズルズルいってしまう危険も無きにしもあらず……なので、自我を育てるようなサポートも大切になります。というのは、あまり休みすぎると、その居心地の良さに安住してしまい、自らの意志で次のステップや自分を成長させる道に進もうとしないこともあるからです。そうなると、悪い意味での退行や精神的な病につながっていくこともあります。そうさせないためには、日常生活の枠組みや家庭での仕事・家事での役割分担、計画をきちんと守り、結果を出すことで自尊心を育み、自ら選択・決定する体験を重ねて自我を強化していくようなサポートができると良いと思います。
 
以前、事故が起きて問題となった戸塚ヨットスクールでも、日常生活の枠組みを外から強制的にではあっても作っていたことから、条件によっては改善した子もいたということでしょうが、合わない子の場合のリスクが大きすぎますので、私としては本人の現状や現実を無視して、あまりに外から強圧的に強制していくやり方はお勧めできません。
 
また、いじめやトラブルの背後に発達障がいが関係していて、その結果、深く傷ついてひきこもってしまうようなケースも見られます。その場合は、うつや対人恐怖などの重い症状がでることもあるのですが、根本にある発達障がいへの対応をきちんとしていないとなかなか状況が好転しないことが多いようです。
 
ということで、発達障がいについても少し触れておきましょう。主なものとしてはADHD/注意欠陥多動性障がいとアスペルガー症候群(最近では、専門家の間では自閉症スペクトラムと呼ばれることが多くなっています)、LD/学習障がい、発達性協調運動障がいといったものがあります。その中でもADHDとアスペルガー症候群が双璧でしょう。両方あるいはそれ以外も含めた複数の特徴を兼ねた人もいますが、いずれにしても対人関係に問題を抱えやすい傾向があり、周囲の対応がよくないと、ひきこもったり問題行動となったりうつ病や反社会性人格障害などの病に発展するケースも見られます。それから、t定型発達…いわゆる普通の人よりもアルコールやパチンコあるいは薬物などの依存症になりやすい場合もあるので、注意が必要です。また、ある種の感覚が特別に過敏であったり、過鈍であったりすることも多く、聴覚が鋭すぎて机を運ぶ音が耳に触って掃除ができなかったとか、視覚が鋭くて部屋を明るく感じすぎるためサングラスをかけないと仕事ができなかったというような例もあります。
 
ADHDについてはドラえもんのキャラクターにちなんで、不注意で集中がしにくいけれどわりと穏やかな「のび太型」と感情の起伏が激しく衝動性のある「ジャイアン型」に分けている研究者(司馬理英子『のび太・ジャイアン症候群』主婦の友社)もいます。昔は、ADHDは子どもだけのもので大人になれば治る……という考え方がほとんどでしたが、最近では、大人になっても骨折やインフルエンザなどのけがや病気ように完治はしないことが分かってきています。つまり、完全にそうではない普通の人と同じになるというのではなく、日常生活はだいたい普通のように送れるように見えても、周囲の対応によってはADHDに特有の見方や感じ方、言動によってトラブルが起こる可能性は完全には消えない、ということです。ADHDの人たちは、他者との関係を結びたいという思いはあるのですが、他の人の感情や空気を読むことが苦手で、そのことが対人関係のトラブルにつながってしまうことが少なくありません。
 
アスペルガー症候群については、自閉症スペクトラムという新しい専門用語の中にある「自閉」という言葉によって多少想像がつくように、あまり他者との関係に意欲を示さない傾向があります。幼稚園や小学校で、あまり他の子どもたちと関わりを持たず、一人で極端に好きなことだけに没頭していることが多いような子どもは、アスペルガー症候群の可能性があります。他者との関係にあまり興味を示さないので、当然、他者の感情や空気を読む必要性をあまり感じていません。知的能力が高いもしくは普通くらいのことが多いので、学校時代は成績の良さが幸いして問題視されず有名大学に進学するケースも少なくないのですが、就業時に他者とのトラブルが顕在化して、うつ病やひきこもりになってしまう例が見られます。
 
発達障がいについての詳しい話は、丁寧にしていくとそれだけでも2時間や3時間は軽く超えてしまいます。詳しくお知りになりたい方は、文庫や新書など手に入れやすい本もたくさん出ていますのでそれをお読みいただくと良いかと思います。また、伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会のブログ「ぼちぼちいこか」には、以前私が講演した発達障害についての原稿もupしてありますので、そちらをお読みいただいても多少は分かっていただけるのではないかと思います。今日は、他にもお伝えしなければならない内容がたくさんありますので、この辺りで切り上げさせていただきます。
 


2015年10月06日(Tue)▲ページの先頭へ
伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会 例会案内(10月)
ぼちぼちいこか

(伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会)
 
 
ぼちぼちいこか 志摩例会
 
日時 10月18日(日) 午後1時30分〜4時30分
 
会場 志摩市阿児町鵜方1975
志摩市鵜方公民館2F小会議室(または1F図書室)
 (近鉄鵜方駅北口下車・徒歩数分)
  電話…0599-43-2211

浜口 / 電話…0599-85-2752
 E-mail…ZAN20571@nifty.com
  
 
子どもみらい会議 伊勢例会
 
日時 10月17日(土) 午後7時〜9時
 
会場 いせ市民活動センター南館
(伊勢税務署横・外宮前交差点のそば)
 
 
【三重県登校拒否・不登校・ひきこもりを考える会】
 今後の予定
11月29日(日)   13 : 30 〜 16 : 30 
   会場 : アスト津3F ミーティングルームB
・不登校やひきこもりの情報提供と悩みについての相談会です。
・当事者の家族(母親)がお互いの話を出し合います。(浜口は出席できません)

シンポジウム
  不登校する子どもの気持ち ~子どもをどのように見守り支えるか~
  10月25日 13:30 ~ 16:30 中京大学名古屋キャンパス センタービル6F,7F
運営協力費 \1,000
 問い合わせ先 Email : network.toukai.info@gmail.com
電話 : 090-1723-6840(福山)


【ちょっとオススメbook】
鍋田恭孝 著 『子どものまま中年化する若者たち』 幻冬舎新書 2015年 \800+税
 子どもたちの生活から自然に群れて遊ぶ機会が失われていく社会の変化の中で、悩めない、あるいは深く自分を語ることができない子どもや若者が増えている、と作者は自らの医療やカウンセリングの現場での経験から子どもや若者の変化を分析しています。その中で、あきらめ流されて生きたり、まじめにはやるが無理をせず小さな世界で生きていったりするけれど、その変化の中の希望も語っている本です。


   


【サークルぼちぼちいこか/伊勢志摩不登校ひきこもりを考える会】は、事務局の浜口が、【三重県登校拒否・不登校・ひきこもりを考える会】(三重県・考える会)の世話役をしていたところ、「伊勢志摩にも家族会を!!」という声が上がったため作られたものです。


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浜口 拓/志摩市志摩町片田で小中高15校20年の経験とフレネ教育やカウンセリングの知識を生かした《浜口塾》を開いています。教育相談にも応じます。また文学活動などもしています。よろしければ【TAC雑想記】 【TAC文芸樹】のblogも覗いて下さい。

カレンダ
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